お稽古の風景
久しぶりに出席したお茶のお稽古で、滝に打たれたような
衝撃を受けた。いや、実際に打たれたことはないので、あくまでイメージだけど。
夏の点前である風炉(ふろ)のお稽古が今年最終回を迎えた日。
今日こそお稽古します、と話す女性があった。
聞くと、足の筋を痛めて正座するのがつらく、
ここ数か月は点前はせず、ずっと見学していたのだそう。
最後の風炉のお稽古だからとお稽古を始めたその姿に、引きつけられた。
七十歳をとうに超えているその方は、
おそらく何十年もお稽古を続けている。
お免状も最高位のものを持っている。
それでも、久しぶりに点前する姿勢は真剣そのもの。
慣れや慢心といった要素はまったく感じられない。
古木の風情をたたえながら、みずみずしい新芽も芽吹いているようなありようを、
客として座って見つめていると、熱くなった。こっそり泣けた。
言葉を並べられただけでは伝わらない何かを、受け取った気がした。
お茶の世界のことはよくわからないものの、
たまにはお茶を続けていて「ああ、よかったなあ」と感じられることがある。
この日がそんな機会だったのかも。これでまた少しは続けられそうだ。