追悼上映で初めて観る『鉄道員(ぽっぽや)』
「 特集上映 銀幕にすべてを捧げた“男”の華が、映画の花道に咲き誇る
二人の主演作を一週間二本ずつ、四週間にわたり上映するという、
すばらしい企画である。
二週目にしてやっと初参加。
一本目は、高倉健主演作『鉄道員(ぽっぽや)』。
鉄道員という生業に人生を捧げた男、
健さん演じる佐藤乙松の物語。
北海道・幌舞線の終着駅、幌舞駅の駅長を務める乙松。
仕事に精魂を傾けるあまり、生まれて間もない娘・雪子や
妻・静枝との別れに立ち会うことがかなわなかった。
辛くないわけではない。
それでも任務を遂行するしかない。
「横すべりのきかんことばっかり」と本人が語るとおり、
実直で不器用な乙松は、世間が描く健さんのイメージに重なるかもしれない。
その人となり、家族の睦まじさや慈しみ、
男同士の友情が、美しい画面に描かれる。
画面はほとんどが住まいも含む駅舎のなかと、
その外側の真っ白な雪景色で占められている。
そして時間軸が現在と過去、ミラクルなときが折り重なり、
現実と夢の世界の境界がぼやけるような
ふしぎな雰囲気も醸す。
乙松の会話でところどころに出てくる、
「なーんも」という言葉が印象に残った。
大丈夫、気にすんな、という意味で使われていたように思う。
遅ればせながら、この機会にスクリーンで観られてよかった。
15年以上経っても古びない作品だった。
1999年6月5日公開、
2015年2月 塚口サンサン劇場で鑑賞。