なずなノート

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美しくて俗っぽくぶっ飛んだ映画『太陽を盗んだ男』

 観終わった後、頭がヒリヒリするような映画だった。

「特集上映 銀幕にすべてを捧げた“男”の華が、映画の花道に咲き誇る
高倉健菅原文太追悼上映』」、
第4週に上映された『太陽を盗んだ男』。
企画の意図をすっかり忘れるほど、グイグイつかまれる作品だった。

ジュリーこと沢田研二演じる城戸(きど)誠は中学教師。
3年生の担任で、教科は理科。
どこにでもいそうな先生であるが、
実はどこにもいない一面をもつ。

それはなんと原爆を作ってしまうこと。
まず核燃料加工施設で原料となるプルトニウムを盗み、
自宅アパートで化学実験を繰り返して原爆を作り上げる。

そして国家を相手に、破天荒かつ荒唐無稽な騒ぎを巻き起こす。
誰も素顔を知る者はなく、昼間はしれっと教師を続ける。
その犯人を追いかけるのが、菅原文太演じる山下警部だ。

あらすじを紹介するのは野暮かもしれない。
画面から飛び出しそうな
色彩とエネルギーに身を委ねるだけで十分という気がする。

特に印象に残ったシーンを一つだけご紹介。
原爆が完成した場面。
城戸はひとり祝杯をあげる。
ここで流れる音楽が、レゲエの神様ボブ・マーリーの「Get Up, Stand Up」。
白い空間で歌い踊るさまが、ふわふわとこの世のものではない心地がした。

そしてやっぱり、文太とジュリーの二人が並ぶと、めちゃくちゃかっこいい!

いや、まいった。
昔、こわいドラマを見たときのゾクゾクした記憶がよみがえった。
そのシーンが終わるまで隠れたり、目をつぶったりした、あの感じ。
今は大人なので見届けることができるけど、
ゾクゾクする感覚は変わらず。

1979年10月6日公開、東宝作品。
長谷川和彦監督。助監督に相米慎二
全国100館以上で封切られたものの都市部で大入り、地方では惨敗と興行成績は芳しくなかったという。
後年、多くのクリエイターに影響を与えた。

2015年3月、塚口サンサン劇場で鑑賞。

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