なずなノート

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藤田美術館「開館60周年特別展」

 約30点の展示作品のうち国宝6点、重要文化財10点という
オールスターキャストのような展覧会だった。

藤田美術館は、明治に活躍した実業家 藤田傳三郎とその嗣子らが収集した
東洋古美術品を春と秋の特別展で公開している。
日本で最初期に作られたという蔵が展示館になっている。

1階の展示会場入口からその輝きが見てとれたのは
曜変天目茶碗」。
南宋時代(12〜13世紀)の作で国宝である。
口縁の銀色の縁取りが光っていた。

水色、青、藍、紫、黒……。
さまざまな色が重なった瑠璃色の曜変と呼ばれる斑文が茶碗の一面に広がる。
 
「宇宙に浮かぶ星のように」と解説があったが、
見ていると吸い込まれそうな奥行きを感じる。
ガラスケースの回りを一周し、見る角度によって異なる輝きを鑑賞した。

そはに展示されていた「油滴小天目茶碗(金時代 12〜13世紀)は直径7〜8センチだろうか。
手のひらにおさまるサイズでかわいかった。

二階で「国司茄子茶入」から目を離そうとした時、女性に声をかけられた。
「今回の展示で本当に見るべきなのは、この茄子茶入と一階にある曜変天目茶碗なんです。
この口のつくりが素晴らしいです」と。

特に気にとめずに見ていたのがばれたようでどきっとしながら、
もう一度拝見。
宗〜元時代(13〜14世紀)に作られた茄子茶入は、
「硬質で薄く軽い上質のつくり」と解説にある。
口から胴にかけて一筋の釉薬が流れ、
下方にふくらんだ形で底の近くでまたすぼまる。
床についている面積が小さく、横から見ると球体に近い感じ。

その隣りには傳三郎が長年手に入れたいと願い、
亡くなる数日前に我が物にしたという「交趾大亀香合」が並ぶ。
今のお金で9億円!の買い物だったとか。
その価値は常人には理解できそうもないが、
執念に突き動かされたのだろうか。

閉館近くの初訪問で今回は時間切れだったけれど、
通いたくなる美術館が一つ増えた。
次回は2015年春に「組むたのしみ」展が開催予定。

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蔵を背景に駐輪場もあった。


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