Year of tapestries 「みほとけのかたち ー 仏像に会う ー」奈良国立博物館
今年は、「タペストリーの一年」なのだそう。
国立国際美術館に「一角獣」が来るし、
奈良国立博物館(以下、奈良博)では、今年「當麻寺」展で国宝「綴織當麻曼荼羅」が展示されたのに続き、
今回の「みほとけのかたち」展で国宝の「天寿国繡帳(てんじゅこくしゅうちょう)」が公開されるのが、その理由だ。
その話を伝え聞いた。
そう、この「みほとけのかたち」展の主役ともいえるのが
「天寿国繡帳」だ。
8月18日までの展示なので、急いで見に行った。
聖徳太子の妃、橘大郎女(たちばなのおおいらつめ)の発願により、
太子が往生した天寿国の情景を刺繍で表した帳。
7世紀、飛鳥時代の作。
中宮寺に伝わり、現在は奈良博に寄託されている。
飛鳥時代の原本と鎌倉時代に作られた複製が
一つに貼り合わされていて、
色鮮やかな部分が原本にあたる。
中宮寺のホームページによると、
日本最古の刺繍遺品なのだそう。
間近で見ると、80センチ四方ほどの中に
さまざまな仏さま、ハスをはじめたくさんの花、
漢字四文字が記された亀甲、
迦陵頻伽(かりょうびんが =顔が人間で胴体が鳥という想像上の動物 )や
エキゾチックというのかシルクロードにいそうな人々が見て取れる。
そういったモチーフの部分が飛鳥時代のもので、
鎌倉時代の複製にアップリケのようにつけられている感じ。
赤、黄、青、緑といった色が今でもわかるので、
作られた当時は、ものすごく華やかな作品だったんだろうと想像する。
国宝のうち、もう一点「十一面観音像」についてもメモ。
こちらは刺繍ではなく一幅の画。
観音さまの肌の色、そして十一面観音が赤からピンクで血色よく、
といっていいのかわからないけれどもよいとする。
竜胆(りんどう)唐草文の光背、
赤や金が使われた衣、
そして台座の蓮の花びらはふわっとしていて、
全体にやわらかい空気に包まれている印象。
平安時代、12世紀の作で、これほどきれいに色をとどめているのは奇跡なんじゃないかな。
こちらも8月18日までの展示。
奈良博では、仏像を美術品としてとらえるだけでなく、
信仰の対象としての面も大切にしている。
だから、みほとけを「見る」ではなく、
「会う」と表現しているのだという。
このあたりはまた後期の展示を見る時に考えたい。
奈良博を出ると、灯ろうに火が灯され始めていた。
ちょうど「なら燈花会」期間中で、
奈良博前でも見学できた。