「チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで」を神戸市立博物館で鑑賞
神戸市立博物館の「チューリヒ美術館展」を訪れた。
近代美術史に名を残した画家たちの作品74点が集まる、
オールスターキャストのような展覧会だった。
美術の教科書に出てくるような、有名な画家の作品が多く、バラエティー豊かなセレクトなので、
見る人それぞれがお気に入りを見つけられるかもしれない。
特に印象に残った3点を紹介する。
1.クロード・モネ「睡蓮の池、夕暮れ」1916/22年
日本で初出展、この展覧会の最大の注目作品。
縦2メートル、横6メートルの大きさに、
モネ(1840〜1926年)自邸の睡蓮の池が広がる。
日が落ちようとする夕暮れどき。黄金の日差しと睡蓮の花と葉、
池に映る木々、広がりつつある影が、画面いっぱいに描かれた最晩年の作品。
右に左に、前へ後ろへと、どこから見るのがいちばんよいか考えながら移動し、
真ん中あたりで落ち着いた。
印刷物やウエブでは再現できない色彩の豊かさと、
夕暮れの一瞬を、誰もやったことない手法でとどめる
試みが印象に残った。
2.パウル・クレー「狩人の木のもとで」1939年
自然との対話に基づいて作品を描いたクレー(1879〜1940年)が、
世を去る前の年に描いた絵画。
真ん中に大きな木を描いた自由な線は、
1928年から29年に訪れたエジプト旅行で目にした
象形文字や壁画に由来するのだそう。
なるほど、砂漠を思わせる茶色や黄色、
緑、青、グレーが配された画面は暖かい雰囲気。
人が一人と、壁画に出てきそうな動物が小さく描かれている。
9000点もの作品を描いたクレーが
不治の病にあって、最晩年まで旺盛に制作したことが伝わる。
3.カンディンスキー「黒い色斑」1921年
色やかたちが奏でるハーモニーを探求したというカンディンスキー(1866〜1944年)。
この作品は、黒い直線や曲線の間に、さまざまな色の円や曲線が描かれている。
カンディンスキーにとって色彩は、音楽や音色と通じるものであり、
黄色はトランペット、濃紺はチェロの音色を表しているのだそう。興味深い。
なぜか今回気になった作品は、
画家が晩年に描いたものばかりであった。