なずなノート

お茶や暮らし、映画、日々の発見をぼつぼつと、ぶつぶつと

シネ・ヌーヴォの企画「銀幕デビューから八十年 女優 原節子のすべて」

 

 映画館を訪れたらいつでもスクリーンで原節子に会えた7週間は、

振り返ればとっても贅沢な時間だった。終わってしまって寂しい。

 

シネ・ヌーヴォで開催された企画上映

「銀幕デビューから八十年 女優 原節子のすべて」。

2015年4月25日(土)〜6月12日(金)

 

デビューから80周年、なぞの引退から53年を経て、

過去最大規模の40数本が公開される特集上映が行われた。

 

そのうち一度だけ特別上映された原節子15歳のときに撮影された

映画『魂を投げろ』から、銀幕最後の姿をとどめた

忠臣蔵 花の巻・雪の巻』まで、まばらながら10本ほど鑑賞。

 

原節子の演技について賛否さまざまあるようだけれど、

スクリーンでその姿を見られるだけで満足だった。

 

にっこり華やかな笑顔、茶目っ気のあるくすっとした笑い、

目を伏せると憂いや悲しみを表現し、ぐっとくる。

 やっぱりいちばん好きな女優さんだと思った。

 

今回観たなかで原節子のベストな表情は、『秋日和』のラスト。

夫を亡くし一人で育てた娘が結婚式を挙げ、家に戻って座っているシーン。

嫁いだ娘を思ってか、これから笑うような泣くような表情。

「慈悲深い」という言葉を体現するとこうなるのかな、と思っていた。

 

原節子評伝」を準備中のノンフィクション作家、

石井妙子さんのトークショーでは、新たな情報も教えてもらった。

原節子が最後に公の場に姿を見せたのは、定説の小津安二郎監督の通夜ではなく、

小津監督とともに脚本を執筆した野田高梧の通夜の席にあらわれたのが最後だという。

 

原節子仕様の自動販売機ともさようなら。

 

f:id:chakurai:20150612215400j:plain

 

桜の咲くころから始まった企画、

最終週にはアートな道案内のそばにアジサイが咲いていた。

 

f:id:chakurai:20150611162001j:plain