なずなノート

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原節子主演作品『お嬢さん乾杯』

 60年以上も前に作られた映画を今も見られて、
しかも笑い声で盛り上がる場内に立ち会えるのは、なかなか貴重な機会であった。

シネ・ヌーヴォの「銀幕デビューから八十年
女優 原節子のすべて」特集で上映された
戦後の風刺コメディの傑作『お嬢さん乾杯』。

原節子演じる池田泰子は、かつては華族のお嬢様だった。

戦後は家庭の事情で窮地に追いこまれ、
「成金」の男性、圭三と見合い結婚することを決める。
自分とは異なる環境で育った、無骨な圭三を受け入れ、
納得して結婚しようとするものの、
本当に乗り気かというと本心は曇りがち。

一目会った時から泰子を「天上の美女」と絶賛していた圭三にだって、
泰子の気のなさは伝わり、
苦渋の決断をする。
そんな二人の恋の行方はいかに。

軽妙で会話のリズムもよく、ちっとも古さを感じさせない。

会話で特に印象に残っているのが、泰子の祖父母が、
孫の身分違いの結婚を嘆くシーン。

お笑いでいう「かぶせる」感じの応酬で、
場内が沸いていた。

今見ても全体におしゃれな雰囲気が漂う。
原節子が演じる元華族で気品高いお嬢さんの美しさに眼福を得た。

1949年公開、木下惠介監督作品。
2015年5月、シネ・ヌーヴォで鑑賞。