季節に沿って生きる映画『リトル・フォレスト冬・春』
「冬が終わってまずすることは、次の冬の食料を作ること」。
夏に収穫したじゃがいもを翌春まで保存しながら食べ、春になったら真っ先に、
次のじゃがいもの植え付けに向けて準備するのだという。
一年に春夏秋冬という四季があって、冬には冬を、
春には春という季節をしっかり生きる。
そんな当たり前のはずのことを、すくいとって見せてくれるような映画だった。
一年を通じて撮影したうち冬と春をとらえた映画『リトル・フォレスト冬・春』。
東北のとある村の小さな集落・小森に暮らす主人公の、いち子。
母は突然失踪し、田を耕し野菜を育て、山菜を採って
自給自足に近い毎日を過ごす。
集落に住む人々は何十種類の野菜を育て、穀物を耕し、
家事もして保存食を作り、山やまちに働きに出たりもする。
土地に住む人々には何てことない日常の、
豊かさというか生き方を、美しい映像とともに淡々と伝える。
「寒いと困るけど、寒くないとできないものもある」
その言葉に納得する。寒いときにだけ作れる食べものがたくさんある。
寒の時期に干す、凍み大根で作る、干し柿入りの大根のなますが
とってもおいしそう。
加熱した大豆を稲わらに包み、雪の下で保存する。
稲わらに納豆菌があり、寝かしているうちに納豆ができあがる。
その納豆を、つきたての餅とあわせた砂糖じょうゆの納豆もちは
どうしても食べたくなった。
冬が厳しく長いぶん、春が訪れる喜びがいっそう強くなる。
満開の桜の下を自転車で駆けるいち子の姿がよかった。
小森ではウメ、桜、菜の花、たんぽぽ、山菜が一斉に動き出すという。
ちょうど今の時期に、そんな春が訪れているころだろうか。
2015年3月、塚口サンサン劇場で鑑賞。