かわいらしくてしぶとい映画『少女は自転車にのって』
自転車に乗りたい!って思ったら、日本だとわりとすぐにかなえられる。
でもサウジアラビアではあり得ないこととされる。女の子にとっては。
慣習から男性と女性とではまったく扱いが異なる国、サウジアラビア。
学校は完全に男女別で、女性が車を運転することや一人旅が禁じられている。
女性はヒジャブという黒いスカーフで髪を隠し、
アバーヤと呼ばれる黒い布で全身を覆う。
その姿では顔が見えず、ちょっとこわそうと思ってしまうところもあるけれど、
黒い布の下には女性の悲喜こもごもが覆われているのだと、
この映画に教えてもらった。
10歳の少女ワジダは、ありあまるほど元気なおてんばで、
ある日、緑色の自転車を見てどうしてもほしくなる。
そして幼なじみの少年アブドゥラたち男の子と同じように
自転車で走りたい!と思う。
でも、女の子が外で自転車に乗ることは許されない。
ワジダはくじけずに、あの手この手でおこづかいを稼ごうとする。
でも自転車代の800リヤルにはものすごく遠い。
そんな時に学校でコーランの暗誦コンテストが行われることを知る。
優勝賞金は、なんと1,000リヤル!
優勝したら自転車が買える!ってことで、がぜんやる気になるワジダ。
さてどうなることか…。
黒ずくめの衣装に身を包みながらも、
彼女はデニムをはいたりスニーカーをはいたりして
先生からとがめられる。でも、めげない。
愛嬌があって、時にはずる賢くもなって、なんとか思いを遂げようとする。
ワジダとお母さんの関係がまたいい。
初めはやんちゃな娘を抑え込もうとするが、
次第に誰よりも彼女を応援するサポーターとなる。
慣習のなかで生きる、自身のつらさを分かち合ってくれる仲間にもなる。
そしてワジダに夢を託す。
映画館の設置が法律で禁止されているサウジアラビアで、
ハイファ・アル=マンスール監督は、同国で初めての女性監督なのだそう。
といっても気負いは感じられず。観た後の印象は、さわやか。
2014年8月、神戸映画サークル例会で鑑賞。