能舞台には幕がなかった。
何もないところに演者や囃子方、地謡が入り、演目が行われる。
舞台を見て左側に伸びる廊下「橋掛り」を演者が通る入場や退場も見せ場となる。
これは何か似ていると考えたら、茶の湯だった。
道具を一つあるいは二つずつ運び入れ、茶を点てる。
終う際は道具を入ってきた時とは逆の順序で運び出す。
いちばん初めに持って入ったものを、いちばん最後に出すというような。
そして最後は元通りの空間に戻る。
何もないところから始まり、いろいろ入ってにぎやかになって、
また無に戻る。
その感覚がおもしろく感じられるようになってきた。
あるいは人のあり方に通じるのかもしれない。