なずなノート

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能楽堂に行ってみた

 能の舞台を見る機会があった。あの伝統芸術である。

600年以上前の室町時代観阿弥世阿弥父子が大成し、

言葉や節回しは当時の様式をとどめているのだという。

 

初めて足を踏み入れた能楽堂は、なんとも贅沢な印象だった。

建築のなかにもう一つ建築が作られたような能舞台、

マイクや音響装置のない中で客席のすみずみまで声や音色が届く

空間のすばらしさ。

 

舞台に登場するのは、大きく分けて3つの演者たち。

役に扮する立方(たちかた)と声楽をうたう地謡方(じうたいかた)、

器楽を演奏する囃子方(はやしかた)だ。

3つの演目で舞台に上がる人数は、のべ30名を超える。

 

金銀糸でさまざまな文様を表現した唐織(からおり)の装束や

演者の顔の角度で表情を変えるという面まで、じっくり拝見したいお宝ばかり。

 

じっくり鑑賞したいと思ったものの、まったくの初心者にはハードルが高かった。

 決してつまらないのではない。いや筋も舞台の美しさも興味津々である。

 

ああそれなのに、うかつにも眠気に誘われて、何度も気をうしないかけてしまった。

室町時代の人々も聴いたであろう地謡のリズムが

今を生きる身には幽玄すぎて気持ちよすぎて、つい。

事前に予習をしておけばよかったのかもしれないけど、もう遅かった。

 

補助席も出るほど盛況の客席には、おそらく300名以上がいただろう。

一回の舞台のためには、どれほど稽古が積み重ねられたのだろう。

 

いや卑近な年月ではなく、その背景には600年以上つづく歴史があり、

その都度ライブで演じられてきたことを思うと、計り知れない。

 

そんなことをアタマの中でめぐらせつつも、身がついていかなかったのは情けなし。

せっかくのお宝を今の時代に引き寄せて、

もう少し気軽に楽しめる方法はないものか。

 

能楽の説明は、能楽協会ウエブの「能楽事典」と『大辞泉』を参考にした。