なずなノート

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映画とライブがシンクロした「フラッシュバックメモリーズ4D」

 音は空気を伝わる波である。

そう物理の先生が教えてくれたことを、このライブを見て思い出した。

もちろん耳で聴いているんだけど、音が腹にくる。

床を伝ってか、服や皮膚にもビシビシ振動が感じられる。

 

 3D映画「フラッシュバックメモリーズ」を見ながら

目の前で演奏されているのを聴くという、なんとも贅沢なライブ。

 

 ステージの後ろにスクリーンがあり、観客は3Dメガネをかけて

映画とライブを体験する。

バンドの演奏シーンがスクリーンに映っているのと同じタイミングで、

GOMA & The Jungle Rhythm Sectionの4人が演奏するわけだが、

どういう仕組みになっているのかは、よくわからない。

おそらくミュージシャンとスタッフどちらもの、凄技によるものだろう。

メンバーは、世界最古の木管楽器といわれるディジリドゥを吹くGOMAをはじめ、

ドラムス、そしてパーカッション2人。

 

  映画は、2009年に交通事故に遭い、軽度外傷性脳損傷と診断されたGOMAが、

過去の記憶が一部消えたり、新しい記憶を覚えづらくなったりという状況にあって、

家族とともに徐々に復活に向かう歩みを描く。

過去の映像や写真をたくさん使って、現在へと至る道のりを紹介する。


 映画「フラッシュバックメモリーズ」が、過去と現在を同時に表現する

ドキュメンタリーだとすると、映画を上映しながら生で演奏している瞬間は、

映画からすると未来の時空だ。

そうすると、このライブは、過去、現在、未来が合わさっているようなイメージか。

時空があちこちに飛び回って自由に行き来しているような奥行きがあった。


 映画で描かれる、 彼岸行ってしまいそうなギリギリのところで戻ってきて

GOMAが再びステージに立つさまは、まるで奇跡のよう。

映画を背景に、目の前で汗をかきながら演奏しているのを目撃することだって、たぶん奇跡。

それは、ただ見ているだけではなく、一緒にこの特別な空間を作っている観客についてもいえる。


 ラスト近くのほんの短い時間だけど、ディジリドゥを吹くスクリーンのGOMAに向かって、

ステージに立つ本人がディジリドゥを吹く一瞬があった。

同じ人物が時間を超えて向き合って音楽を奏でる光景は、

過去と現在がシンクロする、この4Dの試みを象徴する瞬間のようで、

時間が経ってからも時々思い出している。


 それにしても、観客全員が黒い3Dメガネをかけているさまは、

バンドの皆さんにはどんなふうに映っていたんだろう。

ちょっと気になっている。

 

2014年4月18日(金) 梅田AKASOにて