なずなノート

お茶や暮らし、映画、日々の発見をぼつぼつと、ぶつぶつと

「ムード・インディゴ 〜うたかたの日々」ディレクターズカット版

 フランスで作家、詩人、音楽家として活躍した

ボリス・ヴィアンの恋愛小説『うたかたの日々』を映画化した作品。
 
 舞台はパリ。他人のために働かなくても生きていける財産持ちの青年コラン。
家には専属シェフのニコラと、チャーミングで働き者のハツカネズミがいて、
何不自由ない裕福な暮らしを謳歌している。
 
一方、親友のシックは技師として勤めているが、
哲学者パルトルに心酔して彼の著作を買いあさるあまり、いつもお金に困窮。
しかしシックにはニコラの姪アリーズというガールフレンドがいる。
 
 ある日、コランは美しいクロエと出会い、恋に落ちる。
友人たちに祝福されて盛大な結婚式を行い、
しあわせの絶頂期にあった二人だが、
クロエは右肺に睡蓮が育つという不思議な病に冒されてしまう。
クロエにたくさんの花をのせると、クロエの肺の中にいる睡蓮を脅すことができ、病の回復につながると信じて、
クロエのために生まれて初めて仕事に就くコランだが…。
 
 
前半のめくるめくハッピーな情景は、
その心境をあらわすように、まぶしい光と色彩に満ちている。
それが徐々に色が失われていき、最後には同じくフランス映画『日曜日のシベール』のように、霧がかかったようなはかないモノクロの映像へと移っていく。
主人公の心の動きにあわせて、画面の色彩が変わっていくのだ。
 
 原作でもハツカネズミが人間と同様に働いていたり、
スケート場のアナウンスを行うのがカラスだったりして、
かなり個性的なイメージがあふれていた。
 
 それに加えて、奇才映画監督ミシェル・ゴンドリー監督のアイデアも加わると、もう!
アタマがついていけないほど、
さまざまなシーンを見せてもらうことになる。
 
 それでも映画を見ているうちに、「すべて理解でなくてもいいんじゃないか」。
そんな気になった。
ヴィアンとゴンドリーの脳の中を少し見せていただくのでいいんじゃないか、と思えてきた。
 
 「カクテルピアノ」は、各音符と酒や香料の瓶がつながっていて、
曲を演奏すると自然にカクテルができるという仕組み。
 
ルービックキューブでスケジュール管理をするニコラやら、
コランとクロエの初デートで天井高く上がる、雲の乗り物などなど。
ちょっとヘンテコなものたちを、
考えるのでなく作り手のあふれるイマジネーションの世界を
ちょこっとのぞき見る。
それだけでも十分なのかもしれない。
 
コラン役のロマン・デュリス、クロエを演じるオドレイ・トトウ、
ニコラ役のオマール・シーもぴったりはまっていた。
 
 写真は、先月のシネマート心斎橋にて。
「クロエに花を」と、花がたくさん飾られていた。
 

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