「明治のこころ モースが見た庶民のくらし」江戸東京博物館 開館20周年記念特別展 その1
江戸東京博物館の「明治のこころ モースが見た庶民のくらし」展、
なんとなく訪れたところ期待以上におもしろい内容だったので、おぼえ書き。
モースが見て愛した、130年ほど前の日本と日本人の暮らしが
ギュッとつまった日用品320点が展示されている。
エドワード・モースは独学で貝類研究を学び名をはせ、
1877(明治10)年に東大に就任する先生のお雇い外国人として初来日。
生涯に合計3度来日し、通算4年にわたり日本に滞在した彼は
日本とそこに住む人々の暮らしや文化に魅了され、
日常でふつうに使われているものを次々と収集、
さらに暮らしの一コマをスケッチし、写真におさめた。
そのコレクションがあまりにも日常密着した「普通のもの」であったため、
現在日本ではほとんど残っていないものも多いというから驚く。
その展示内容は、衣食住すべてにわたり守備範囲がめちゃくちゃ広い。
印象に残ったのは、たとえばこんなものたち。
■「お歯黒道具」
持ち手と注ぎ口つきの容器、小さな茶碗ほどの容器、筆
中国茶で使う急須に似たかたちと大きさの容器には、
蒔絵だったか美しい装飾が施されていた。
お歯黒を塗る女性を描いたスケッチもあり、モースはよっぽどお歯黒に興味津々だったんだろうか。
その横には使いかけの「紅皿」も展示されていた。
■「台所道具」
真ん中が湾曲してへこんだ砥石(といし)、
何か所も鋳掛(いか)けして修繕した跡の残る、継ぎはぎだらけの片手ナベ、
籐の飯びつ、すりこぎやしゃもじなど。
使用中のものを、持ち主から直接譲り受けたのであろう品々。
当時のものがそのまま残るのはめずらしいのだそう。
そりゃそうだ。いまの暮らしを考えてみても、それは理解できる。
美術品や特別な工芸品だったらなかなか処分しないけど、
ふつうに使っているものはたいてい、くたびれてきたら処分するもの。
それを思うと、モースが集めておいてくれたおかげで
今でも当時の「普通のもの」見ることができるというのは有り難いと感じる。
名前しか知らなかったモースのことをグイグイ知り、
好奇心のかたまりのような人だったんだろうなあと想像がふくらむ。
そうそう、モースは「大森貝塚の発見者」として有名だけど、
貝塚を発見したのは、なんと来日3日目だったとか。
横浜から東京へ汽車で向かう車中、大森付近の線路の切り通しに
貝殻の堆積を認め、一目で貝塚であるとわかったという。
そのすごさの本当のところはよくわからないが、
よくよくまわりを観察していないと、遺跡の存在には気づけないだろう。
そういえば、この展覧会を見る前日に品川から川崎へ向かう途中に
大森を通り過ぎたはず。意外なところに遺跡があったのだなあと後からしみじみ。