なずなノート

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湯木美術館平成25年夏季展「吉兆庵湯木貞一の茶事 涼の茶道具と朝茶」

 

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 湯木美術館で開催中の「吉兆庵湯木貞一の茶事 涼の茶道具と朝茶」展、

後半の二期へ。

 昭和30年7月28日に大阪の高麗橋吉兆で催した、

朝茶の茶会記をもとに、道具組が再現されている。

 

「朝茶」とは、夏ならではの茶事。

まだ暑さがマシな早朝から始め、日中の暑さを避けて

涼しいうちに懐石とお茶をいただくという、軽快なスタイルだ。

 

 気になった作品いくつかをご紹介。

 一つめは今回の目玉作品、「蕣(あさがお)絵賛」。

茶会では懐石の掛け物として使われたのだそう。

 

松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)画・江月宗玩(こうげつそうがん)・

小堀遠州(こぼりえんしゅう)・松花堂昭乗乗賛。

 

 賛は、画面に書きそえた、その絵に関する詩句をさす。

この「賛」が興味ぶかかった。

 

 画面中央に昭乗による朝顔の墨絵があって、

そのすぐ左に遠州、つづいて宗玩、最後に昭乗の自画自賛がある。

 連歌というのとは違うだろうけど、

それぞれの詩句の意味がつながっている。

 

さらに文字の大きさと太さが、

大、中、小と並んでいて、リズムがあってかっこいい。

 

いまでいうところの「コラボ」っていうのかな。

即興で三人が描いたのか、もしそうだとしたら、どんなシチュエーションだったんだろう。

 

 朝顔の花びら外側、葉が濃く描かれた墨の濃淡が涼やか。

 早朝にこの掛け物を目にした客と亭主の間で会話が弾みそうだ。

 

 

遠州(1579〜1647)は、京都伏見奉行を務める大名、

宗玩(1574〜1643)は大徳寺の塔頭 龍光院の住職、大徳寺156世、

昭乗(1584〜1639)は岩清水八幡宮瀧本坊の社僧。

同じ時代を生きる才能豊かな三人が、

立場を超えて交流を続けたのだという。

 

 

  その横には江月宗玩の筆による「什麼(じゅうも)」が掛かる。

「什麼」とは、「なんの」「どんな」の意味。

 

宗玩は、遠州の帰依によって大徳寺の塔頭、

孤篷庵(こほうあん)を創建。

孤篷庵には遠州の「綺麗さび」のセンスが詰まった茶室「忘筌(ぼうせん)」がある。

以前から知っていた遠州忘筌

そして今回初めて知った宗玩が、これでつながった。

 

 「瓢香合 松平不昧歌銘『面壁の』」松平不入作

初座の炭手前に用いられた香合。

 

ひょうたんの形をそのまま生かして蓋と身に割り、

真ん中あたりに墨で漢詩が書かれている。

 

どっしりした姿から、9年間、

壁に向かって座禅を続けたという禅宗の祖、達磨(だるま)大師を想定して香合に仕立てられたよう。

身の外側底には、不昧公の花押あり。

 

 写真パネルにあった、八丁味噌に小芋の味噌汁椀や、

茶会記に記されていた、井戸平皿に盛った向付の「カレイの干物 キザンデ 大根オロシ 大メジソ」だったか、

アユのうるかだったか。

黄瀬戸福之字鉢に盛りつけた、生しば漬、

ゴツゴツした備前写片口鉢 保全作を用いた、かも瓜とインゲンの炊き合わせ…。

 

朝茶の懐石のさらりとした献立に想像がふくらんだ。

 

作品については、展示の説明を参考にした。