「國府理 未来のいえ」展 西宮市大谷記念美術館ーー空想と機能のあいだ
「画家が絵を描くように、文筆家が文章を書くように、
実際に走ることによって、はじめて作品として完成する」と、
作家の國府理はいう。
國府理は、自動車、自転車などの乗り物をモチーフとして、
大型の立体作品を発表しているアーティスト。
この展覧会では、初期作品から植物を取り入れた近作群、
実際に稼動する新作を展示。
会場をぐるっと見て回ると、機能美と呼びたくなる、
大きな作品に出合うことができた。
弱小自転車乗りとしてまず気になったのは、上の画像にある
「プロペラ自転車」。
作家は「プロペラのついた自転車でレースをしている夢を見た」そうだ。
それで、「木を削りプロペラを作り、廃棄された草刈り機のエンジンが動くように」と、「空想の世界の職人になって」手を動かしたという。
めいっぱいペダルを漕いでいるうちに、
飛行機が滑走路から飛び立つようにふわっと宙に浮かぶんじゃないか。
そんな気分になる作品は、床ではなく
壁面に浮かせて展示してあった。
下の「KOKUFU MOBILE」には、車輪もスクリューも付いている。
「ここではない何処かへ連れていくことができる、
その可能性こそが、乗り物の重要な機能」という作家の意図は、
車輪で波に乗るように地面を疾走したり、
スクリューにより陸上を走るように海上をすべること。
「Sailing Bike」は、セイル付きで、どこまでも進みそうなデザインだ。
美術館を訪れたのは土曜日だったので、作家が展示作品の点検、調整、
試運転を行う日。ちょうど2階で稼動しているところを見学できた。
その作品は、「未来のいえ」!
高所作業車の上にビニールハウスを乗せ、その中には真ん中に池があり、
木々が生い茂る。
ジー、ジーとモーター音を響かせながら、ゆーっくりと「いえ」は動き、
白いシートの上を往復しつづける。
ハウス内は、シダや苔といった日陰植物をメインとしたお庭のようだ。
室内には確かに自然があるけれど、
その環境は車上のビニールハウス。
長くいられる場所ではない。
そんなところに人と機械、機械と自然の関係を問い直すという、
作家の意図が込められているのかもしれない。
観客としては、小さな自然が動いている非日常感は見ていて飽きなかった。
昨日、終了した展覧会だけど、おぼえがきのためにアップすることにした。
屋外にはパラボラアンテナを逆さまにした上に植物が育つ
「親子の庭」が展示されていた。
(館内は撮影可だったので撮影。太字は、展示のキャプションを参考にした)