なずなノート

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「BLUE & WHITE 藍と白の美 そばちょこ・藍染めを中心に」大阪日本民芸館2013年春季特別展

  そばちょこをメインに、藍と白の作品を集めた展覧会。

タイトルの「BLUE & WHITE 」とは、白地に呉須(ごす)で模様を描いた染付(そめつけ)を指す言葉だ。

 

 今回セレクトされたそばちょこは、ほとんどが古伊万里と呼ばれる江戸時代の伊万里焼。

佐賀県の有田を中心とした肥前地域で焼かれ、

伊万里港から全国へ出荷されたものだという。

 

そばちょこは白地の磁器に呉須で絵付けがされ、

その上から透明の釉薬をかけて焼成するため、

独特のにじみが生まれるのが特徴。

 

もともとは、酢の物など料理の向付(小鉢)として使われていたと考えられるが、

江戸時代にそば食が流行ったことにより、

つけ汁を入れる器として普及し、大量に生産されたのだとか。

 

 大阪日本民芸館が所蔵するそばちょこ約3000点の中から

今回は約1000点を展示。

いずれも一人のコレクターが数十年かけて収集し、

館に寄贈したものというから驚く。

 

そばちょこと一言でいっても、どれ一つとして同じものはない。

  植物文様が圧倒的多数で、あとは動物、自然、人物、

吉祥文様などなど。

 

具体的には、植物では松竹梅、菊花、梅、ヒョウタン、

瓜、秋草ほか、

千鳥や海老、漢詩や唐子(からこ、中国の子どもたち)……。

おめでたい文様を中心に、何でもありな世界!

 

大きさは一定ではなく、

酒を飲むおちょこくらいの小さなものから、

飯碗に近いサイズまで、けっこう幅がある。 

 

 色とサイズに制限があるなかで、

それをお題として、のびのびと絵付けしていることが見て取れる。

 

 そう、そばちょこには江戸時代のグラフィックデザイン

込められているのだと感じた。

それも作家性を追求するのではなく、

無名の職人たちの工夫が詰まっている。

 

数あるなかで、妄想ながらお持ち帰りしたいと思った

そばちょこ 3点をセレクト。

 

一つめは、「五葉若葉(ごようわかば)重ね」コーナーにあった1点。

 江戸時代中期に広まった五葉若葉の文様が時代を下って簡略化され、

五枚の花びらの小花文様になり、それらをピラミッド状に並べた三角形を、大小二つずつ配置。

内側には「四方(よも)だすき」の文様あり。

いちばん好みのそばちょこ。

 

二つめは、「雨降り文」。江戸時代中期の作。

灰色がかった地に、上部だけに筆でささっと雨しずくが描かれている。

デュラレックスの小さいグラスくらいの小ぶりなサイズ。

 

 三つめは、「秋草」コーナーにあった菊のそばちょこ。江戸時代中期の作。

一重の菊の花がのびやかに描かれ、

口は茶色で縁取られている。鉄釉か。

 

いずれも余白がある、地味めな作風。

見る人によって目が行く作品がまったく違う展示だと思う。

 

ほかにも絵付けしてない白地のそばちょこや、

リズミカルな格子柄も気になった。

桜よりも梅のモチーフが格段に多かったけれど、

江戸時代は梅のほうが人気が高かったのかな。

 

(太字は展示資料を参考にした)

 

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