かっこいい女性が時代を切り開く映画「ヒステリア」
「女性のための“大人のおもちゃ”誕生秘話」というコピーを見た時は、
この映画を見たいとは思わなかった。
でも、見た人の反応がよかったので行ってみたら、よい意味で予想を裏切られた。
実は骨太なテーマも流れる。実話にもとづくラブ•コメディ。
「大人のおもちゃ」誕生につながる、上流階級の女性たちのための
ヒステリー治療!? に携わる男性と、
社会の底辺にいる弱者のために奮闘する女性。
同じ時代を接点なく生きる二人がある時、出会い、シンクロしていく。
舞台は、イギリス・ビクトリア女王時代の1880年のロンドン。
理想に燃える若き医師モーティマー・グランビルは、
患者を劣悪な環境にさらす勤務先の院長に異議をとなえ、
クビになってしまう。
どうにか職を得たのが、女性治療の第一人者とされる医師ロバート・ダリンブルのクリニック。
そこでは「ヒステリー」に悩む女性たちを治療するための「マッサージ」が行われ、
連日大賑わい。若いイケメン医師グランビルの加入により、
マダムたちのテンションは、さらにアップ!
ダリンブル医師の末娘、貞淑なエミリーともよい仲になり、
後継者に指名され、グランビルの環境は一気に改善する。
そんな日々に、福祉施設で働く粗雑でエネルギッシュな、
ダリンブル医師の長女シャーロットにも出会う。
うわべを取り繕って暮らすダリンブルにとって
正直に生きるシャーロットは、なんとなく疎ましく、
父ダリンブルからも煙たがられる存在。
すべて順調に進むかに見えたダリンブルだけど、
仕事をがんばりすぎて腱鞘炎になり、患者を満足させられなくなったら即クビに…。
途方にくれ、お金持ちの友人で発明家の
エドモンド・セント・ジョンスミスの部屋に舞い戻る。
すると、ジョンスミスが試作中の「電動ホコリ払い機」から
「電動マッサージ器 = バイブレーター」を思いつく!
女性のお悩みを解決するバイブレーターはたちまち人気に火がつき、
ダリンブルは大金を手にする。
そのお金を彼が活かす先は。。。
ダリンブルの浮き沈みに関わらず、主人公シャーロットは、もともと恵まれた身分ながら、
福祉施設で貧しい女性や子どものために力を尽くす。
「死ぬまでに、女性への教育の機会の平等、財産保有権の保障、参政権を実現したい」と志し、
「一生を家事に費やす女性を解放したら、自分の価値に気づく」とガンガン進む。
ダリンブルに実現不可能だと諭されると、
「力を合わせれば、何だってできる。
小石を投げ、波紋を起こす」と答える。
「人々を助けることで、自分は生きがいをもらっている」とか「平等なパートナーを望む」とも。
なんとも頼もしい!
困窮した女性を助けるため警官に盾を付き、
挙句に投獄。裁判にかけられるシャーロットに接し、
ダリンブルは「誰とも違う」と心を動かされる。
水面に波紋が徐々に広がるように、
シャーロットの歩みは、世間体を気にするダリンブルや、
父の望む娘として生きてきたエミリーや、
希望を持つことさえあきらめていた女性たちの心を動かしていく。
「自分次第で人生は大きく広がる」のだと。
映画のテーマとは直接関係ないけれど
道路を自転車で走るシャーロットがかっこよかった。
19世紀末といえば、現在の自転車の原型「セーフティバイシクル」が
ちょうど発売された頃。
現在は自転車でガンガン走るのが当たり前だけど、
ほんの130年前までは普通じゃなかった。
同じように、女性の権利だって当時はまだまだなかったのだなあと、しみじみ。
「映画に登場するのは架空の人物である、
しかし偶然にも映画に出てきたような人物は実在した(意訳)」
と、エンドロールの最後に記されていた。