大山崎茶会2013年春「福建」
5月18日、アサヒビール大山崎山荘美術館で開かれた、
大山崎茶会「福建」を訪れた。
この催しは、大阪・西天満にある中国茶館「無茶空茶」さんが
開催している。普段は非公開の茶室や、
庭園、あずまやを会場にして、さまざまな中国茶を楽しめるという趣向だ。
毎年2回、春と秋の気候のよい時期に催されていて、
この春で22回目というから、10年以上続いているということか。
今回のテーマは、「福建」。中国きっての茶どころ、
福建省のお茶の特集。整理券制の茶室の席はあきらめて、
庭園の茶席をいくつかまわった。自分がいただいたものだけ記す。
最初にいただいたのは、庭園にある「点翠席」。
福建南部の古い茶産地、安渓(あんけい)の「安渓鉄観音」。
茶葉そのものでなく、製茶したあとの細かい粉末の茶粉を
氷で出した冷茶でいただく。そのビジュアルに驚いた。
氷を頭上につるし、溶けた水滴を粉茶にたらし、
ゆっくり抽出したもの。特注のザルに氷を入れて、のんびり出したお茶を、
すくって飲むと、青々とした山の精を味わう心地。
あずまやの前には、カキツバタが新緑に映えて。
広い原っぱのような庭園には、
青竹で作った筏(いかだ)が登場。
海に見立てた緑の芝生の上で、
これまた福建名産のジャスミン茶を氷出しで。とろりとした飲み口に頬がゆるむ。
青竹の筏に座って、気持ちだけしばし海を渡る。
「百花席」では、茶葉の中に花を仕込んだ「工芸茶」を点茶。
固くしぼんだ茶のかたまりに湯をさすと、だんだんとふっくらした花が咲く。
こちらは、見た目がごちそう。
「荒茶席」では、3種のお茶を提供。いずれもゴールデンウイークに作られたばかりの新茶。
私がいただいたのは「105大紅袍(だいこうほう)」の三煎目。
岩に育つ茶樹から作られる貴重な大紅袍、
ただ三煎目ともなれば、ちょっと味が薄かったかな。
福建はまた、世界における紅茶の発祥地でもあるという。
なかでもイギリスで愛好者の多い「正山小種(ラプサンスーチョン」を
「松燻席」でいただく。
松の木で燻製するため独特のスモーキーな香りが特徴。
飲んでみると、さらりとおいしかった。
福建は陸地のほとんどが山間地で、一方で海岸線が370キロも連なり、
歴史的に船の民であったそう。
短時間の滞在だったけれど、新緑のなか
福建の茶を巡る旅に出かけた気分を味わわせてもらった。
福建についての記述は、当日配布された資料を参考にした。