なずなノート

お茶や暮らし、映画、日々の発見をぼつぼつと、ぶつぶつと

チャリティー茶会に掛かる、篤志家の軸

f:id:chakurai:20130309103954j:plain

 朝日新聞チャリティー 第59回各流合同茶会へ。

この茶会は、収益を福祉事業に充てることを目的に開催され、

抹茶・煎茶あわせて各日6流派の

宗匠が茶席を設けるというもの。

 

39日(土)朝、表千家の生形貴重先生のお席に入る。

生形先生のお席は、毎回テーマが明確で、

趣向が凝らしてあり、驚きがいっぱい。

 

今年の主題、と私が感じたのは、掛け物「玉絵賛」を手がけた山口玄洞だ。

「山口さんは福祉の権化のような人で、

今日のチャリティー茶会の趣旨にぴったりの人物」と生形先生。

彼の来歴については、こんなお話があった。

 

広島県尾道出身の山口玄洞は、明治時代終わりに大阪で繊維業を営み、

富を築いた人物。

そのきっかけとなった出来事があった。

 

生地を載せて日本にやって来たイギリスの船が、

暴風雨にあい、生地が海に浸かってしまい売り物にならなくなった。

それを気の毒だからと買い取ったのが、山口玄洞だった。

 

手間をかけて元通りにして売り物にしたものの、

コストがかかり、もちろん儲けにはならない。

 

ただ、恩義を感じたイギリスの商社は、

以後、生地を山口玄洞の会社、山口商店だけに販売することに決め、

大いに栄えた。

 

そうして得た儲けを、山口はほとんど全部寄付したという。

たとえば、家が千円で建つ時代に、105万円を寄付し、

尾道の水道整備に尽力したり、

仏道に帰依し、神護寺の金堂建立に寄進したりと

儲けも大きいなら寄付のスケールも大きい!

 

茶道もたしなみ、表千家12代、惺斎(せいさい)の弟子であったのだそう。

お話を聞いているだけで、心が洗われるよう。

同じ流派を習う者として、少しでも見習えたらよいのだけど。

 

茶人であり篤志家でもある人物の掛け物を用いることで、

チャリティー茶会という全体の趣旨に添わせる。

そんな趣向が新鮮だった。