なずなノート

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シネ・ヌーヴォで開かれた野上照代さんトークショー その2

 『七人の侍』誕生六十周年記念 黒澤明映画祭の一環として

11月22日(土)に開かれた野上照代さんのトークショー。

野上さんは元黒澤プロダクションのマネージャーでスクリプター

ロシアで撮影した『デルス・ウザーラ』に参加した

日本人スタッフ5人のうちの一人でもある。

 

たくさんお話があったうち、少しだけ野上さんの言葉を覚え書き。その2。

 

黒澤作品は「どのカットも作ってる」。

羅生門の影をつくるのだって自然なものではない。

「画面の隅から隅まで作っている」のだと。

 

黒澤作品の最大の特徴といえるのが「編集」。

山のようなフィルムを使って撮影し、

編集する時に初めて「演出」をする。

よりどりみどりの材料を前に、どのように編集するか。

その編集作業は誰も寄せつけないくらいに素早いものだったという。

 

「僕は編集の材料を撮影するんだからね」と黒澤監督。

その環境がいかに贅沢なことか。

 

黒澤作品を構成するカギの一つ、音楽について。

「映画音楽は掛け算である」というのが黒澤監督の考え。

絵と音楽が掛け算になって別のものができる。

それが映画音楽のあるべき姿であると。

 

酔いどれ天使』『野良犬』『醜聞 スキャンダル』『羅生門』、

『白痴』『生きる』『七人の侍』そして『生きものの記録』まで

音楽を担当し、監督から絶大な信頼を寄せられていたのが

早坂文雄。彼は41歳で早世してしまい、『生きものの記録』が遺作となった。

 

早坂が亡くなった時、黒澤監督は一週間撮影を休んだ。

盟友の死に本当にショックを受けていた、と野上さん。

 

最後は観客からの質問にも答えてくださった。

美しい白髪にヘアバンドを巻き、よどみなく話すそのお姿は、

ほんとかっこいい。

最後は観客に投げキッス。あっぱれ! しびれました。

 

野上照代さんトークショー その1はこちら