なずなノート

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「千家歴代と樂歴代の茶道具ー利休のデザインと展開ー」

「千家歴代と樂歴代の茶道具ー利休のデザインと展開ー」

湯木美術館
 
千利休と長次郎が生み出し、樂家に400年以上受け継がれてきた茶碗。
千家と樂家それぞれの歴代の好みや作風に着目した展覧会。
 
とくに気になった作品数点をご紹介。
 
1.「三足蓋置」
今回いちばん好きな茶道具は、小品であった。
樂家三代の道入(どうにゅう)作。
 
道入(1599〜1656)による赤樂の蓋置。
現在の見た目は明るい茶色。
 
ノンコウとも呼ばれる道入は、香合や蓋置など小型の茶道具に
優れた造形作品を残していて、三足蓋置もその一つ。
 
形状は、青銅や唐銅の三つ足の容器「鼎(かなえ)」または五徳。
 
手のひらに乗る大きさで、三つ足がくるんと丸まっているところ、
円が三つくり抜いてあるのがかわいらしい。
 
 
2.茶杓 武野紹鷗作
紹鷗(1502〜55)は堺の豪商で多くの名物を所持し、高い教養を持った茶人。
千利休をはじめ、津田宗及や今井宗久などを指導したとされる。
紹鷗が活躍した時代の茶杓は、節なし、節止(ふしどめ)、下り節の形状で、
長さ20センチであったとキャプションに記されていた。
 
利休が節をほぼ中央に置くこと(中節・なかふし)、
長さ17〜18センチにすることを定めた後、
現在までそれが茶杓のスタンダードになっている。
 
それを経て、次の作品へ。
 
3.茶杓 歌銘「牛の子に」北野三十本の内 如心斎宗左作
表千家七代の如心斎(じょしんさい、1705〜51)は、
茶の湯の変革期にあって家元制度の基礎を築き、
千家伝来の茶道具を整理し、裏千家八代の一燈宗室とともに
七事式(しちじしき)を制定した人物。
 
北野天満宮の修復のために自ら削った茶杓30本の内の一つ。
筒に「牛の子に ふまるな庭の蝸牛(かたつむり)
つのありとても身をな頼ミそ」と書かれているのが読み取れる。
 
全体に胡麻があらわれた茶杓は、中節で、
長さが17〜18センチ程度で、紹鷗作と比べると、
ずいぶん小ぶりであることがわかる。
 
4.ノ貫(へちかん)在判の「黒大棗(くろおおなつめ)」
ノ貫は、千利休(1522〜91)と同じ時代を生きた茶人。
利休と同じく武野紹鴎門下とされる。
 
京都・山科に住み、手取釜一つで飯を炊き、茶を点て、
利休を茶事でもてなしたという。
 
床の間に鍬(すき)を飾るなど、ユニークな茶を行った人物。
『茶話指月集』で紹介されているみたいだけど、
おもしろそうな人物で、かなり気になる。