なずなノート

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チェ・ゲバラの若き日を綴った映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』

 チェ・ゲバラがどんな功績をあげた人物なのか、

あるいはキューバ革命がどういったものなのか、

恥ずかしながら不勉強ゆえよくわかっていない。

 

それでもこの作品を観ると、後に「チェ・ゲバラ」と呼ばれ、

キューバ革命の指導者となったエルネスト・ラファエル・デ・ラ・セルナという

人物に強く引きつけられた。

 

キューバ革命の英雄とされるチェ・ゲバラがまだそう呼ばれるより以前、

エルネストと呼ばれていた若いころの南米旅行記。

 

1952年1月4日、23歳の医大生エルネストは、

先輩で29歳の生化学者アルベルト・グラナ—ドと

アルゼンチンのブエノスアイレスから南米大陸縦断の旅に出る。

 

1939年製のおんぼろバイク「ポデローサ号」に2人でまたがり、

荷物をいっぱい乗せ、行き当たりばったりの旅。

アルゼンチン、チリ、ペルー、ベネズエラと南米大陸を北上。

 

先住民族や鉱山で働く労働者、ハンセン病患者など、

旅先で人々と出会い、交流するなかでエルネストは一つの思いにたどり着く。

「無意味な国籍により国が分かれているが、

南米諸国は一つの混血民族なのだ」と。

 

冒頭とラストに「これは偉業の物語ではない。同じ大志と夢を持った

2つの人生が しばし併走した物語である」と字幕が出る。

ここでは英雄としてではなく、どこにでもいそうな線が細くてぜんそく持ちで

正直な医学生が、後から人生を変えるきっかけのとなったのではと

振り返るような、芽生えともとれる旅の様子が綴られる。

 

たとえ各地で貧困や病気といった厳しい現実を生きる人々に直面したからといって、

誰もが革命にまい進するわけではない。

でもエルネストは自ら考え、行動を起こした。

そのあたりの萌芽(ほうが)、あるいは化学反応のようなものを

一緒に味わえる気がしてくる。


といってもシリアスなトーンだけではなく、

訪れる国々でみんなダンスしていたり、

恋人に会いに行ったりも生き生きと描かれ、

なんだか親近感をもってしまう。

 

ラストシーン、旅をともにしたアルベルトの82歳の姿が映し出される。

志半ばで早世した友でありキューバ革命の名高き指導者エルネスト

チェ・ゲバラに敬意を込め、彼はキューバで医大の設立に力を尽くしたという。

 

2014年12月、神戸映画サークル12月例会で鑑賞。