なずなノート

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平成25年秋季企画展 開館十五周年記念「初代浄林・二代浄清」大西清右衛門美術館

 江戸時代の初めから三条釜座で工房を構える大西家は、

四百年にわたり、茶の湯釜を作り続けてきた伝統をもつ。

 

今回は大西清右衛門美術館の開館十五周年記念で、

初代 浄林(1590〜1663)とその弟で飛び抜けた名工ともいわれる

二代 浄清(1594〜1682)に焦点をあてた展覧会。

釜の詳しいことはわからなくても、デザインや素材のおもしろさが伝わる展示だった。

 

「古木二鳥地文霰肩衝覆垂釜」は、浄林作。

肩が直角に張り、霰(あられ)が施されている。

釜の肩につかまる鐶付(かんつき)にいるのは、猿。

肩にとまるような格好で、顔をこちらに向けている。しっぼ付き。

 

 「松花堂好 内輪ニ松梅地文四方釜」は、浄清作。

四角いフォルムと、底にかけて丸みを帯びているのが目を引く。

 

「糸目撫肩釜鯰鐶付」浄林作。

細くくびれた口から胴にかけて、タマネギを思わせるといっていいのか、

安定感があり、細かな糸目が刻まれている。

最初見た時は「木の年輪?」と思ったけど、鐶付が鯰(なまず)であるから

これは水面をあらわすという。鯰がいて水面が広がっているイメージ。

 

今回、いちばん気になったのが「菊地文乙御前釜」。

乙御前(おとごぜ)とは、「おたふく」のこと。

この釜は、おたふくのようにふっくらした形。

つやのあるなめらかな肌に、ひと枝の菊を表現している。

蓋に菊花が華やかに咲き、その両側の鐶付は菊のつぼみ。

 鐶付をつなぐように花や葉、枝がつながっている。

 

造形と技術があわさって成立する、おもしろさ。

こっちを向いている猿とか、華やかな菊地文や

 鐶付の鯰など、今見てもデザインが茶目っ気が感じられる。

名工による技術とともに、四百年ほど昔の人の感性と会話できたような気がして

 なんだかうれしくなった。


ほかにも「鶴の釜」をはじめ華やかで重厚な釜なども多く展示されていた。


 

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