なずなノート

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1250年前の宝物を拝見「第65回 正倉院展」奈良国立博物館

 奈良国立博物館の「第65回 正倉院展」へ。

雨にも負けず、大混雑にもめげずに正倉院展を訪れるのは、
 奈良時代のロマンあふれる品々に会いたいからだ。
 
東大寺近くに、奈良時代中ごろ(8世紀)に建てられた宝庫「正倉院」がある。
聖武天皇遺愛の品をはじめ、后(きさき)である光明皇后の愛用品、
皇族や貴族が東大寺のほとけに献納した物、東大寺で用いられた仏具や文書など、
約9,000件にのぼる宝物が納められている。
 
 その中で今年公開されたのは、66件。
今年の展示は、宝物を守り伝えてきた人々の営みがうかがえる品々が多い点に特徴があるという。
 
 気になった宝物をいくつか覚え書き。
 
平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう) 附 題箋
 
夜光貝やトルコ石、ラピスラズリをちりばめた鏡で、聖武天皇遺愛の品。直径27.2cm。
 
蘇芳地金銀絵箱(すおうじきんぎんえのはこ)」
 
今年の展示で最も惹かれた宝物。
サクラ材の長さ30cmほどの献物箱で、外側は蘇芳地に唐花文(からはなもん)、
内側は白緑(びゃくろく)地に小花文、
底の裏には鳳凰と獅子があしらわれている。

白緑地、というのは今みるとペパーミントグリーンの印象。

蓋の表の中央には金で唐草文、そのまわり四辺を小花でびっしり縁取りしてある。

「かわいい!」という声がいくつか聞こえた。

きょうけち羅几褥(らのきじょく)」
 
 これも今見ても断然かわいい!
「 薄物の絹(羅)に花葉を円状にめぐらせた中に、うずくまる鹿の文様」と説明にあったが、
花と蔦で描いた円の中に鹿が座っている、という構図は、まったく古さを感じさせない。
この宝物の用途は、献物用の台の上敷き。

草木染めの「鹿草木夾纈屏風(しかくさききょうけちのびょうぶ)」もそうだけど、
奈良時代から奈良では鹿は親しまれていたのかな。

檜和琴(ひのきのわごん) 附 タイマイ

日本固有の楽器。 
表面に金銀の尾長鳥などの文様が描かれ、
両端には螺鈿やタイマイ(ウミガメの甲)、花模様などがあしらわれている。

和琴は平安時代以降の呼び方で、奈良時代までは「やまとごと」と呼ばれていたという。

「新 日曜美術館」では、人間のために使うわけではない、特別な儀式でほとけさまのために奏でる楽器だと紹介されていた。
 
伎楽面

「伎楽面 酔胡従(すいこじゅう)」は、酔っておどけた西域諸国の人をあらわす面。キリ材。
困ったような眉、すぼめた口といった表情を見ると、こちらもにっこり。

伎楽とは、中国・江南地方で始まった仮面劇。
7〜8世紀に仏教法会などで上演されたという。

ほかにも今年初出陳の「伎楽面 太孤父(たいこふ)は、孤独な老人をあらわす面で、髪と髭には人間の?毛髪が使われていた。

「白石火舎(はくせきのかしゃ)」は、大理石の香炉。
足の部分が獅子になっていて、
獅子が両手(前脚)で香炉を支えている姿がなんともほほえましい。

「漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)」は、今年の目玉ともいえる宝物。

ハスの花の形をした仏具。
金箔をはった木製の花びらには獅子や唐草文、
極楽浄土にいるとされる鳥「迦陵頻伽(かりょうびんが)」が描かれている。
写真で見るより大きく感じられた。
直径56cm、高さ17cm。

「新 日曜美術館」で見たお話によると、花びらは風により揺れるのだそう。

香炉の中央で焚く香の煙も花弁も揺れ、
香りがほとけさまの世界に届く仕掛けだという。

1250年前の品々が、今あるだけで奇跡。
その奇跡を体感したくて、また来年も出かけたくなるんだな。

閉館1時間半前には大変混雑していたが、
閉館前1時間を切ると、かなり見やすくなった。
霧雨降る奈良公園で草を食む鹿は、ちょっと幻想的だった。

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