なずなノート

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奈良国立博物館「當麻寺 ー極楽浄土へのあこがれ ー」展

 奈良国立博物館で開催中の當麻曼荼羅完成1250年記念特別展

當麻寺 ー極楽浄土へのあこがれ ー」展を訪れた。

 

 當麻寺(たいまでら)は、二つのピークを持つ二上山の

東麓に位置する寺院。

この寺院があるのは、難波(なにわ)と飛鳥をつなぐ

竹内街道に近い交通の要衝であり、

多数の墳墓が造営された「あの世」とつながりの濃い地。

 

當麻寺の本尊は、「綴織當麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら)」。荘厳な極楽浄土を表した絹織物だ。

當麻曼荼羅を現出させ、極楽往生を果たしたとされる、

中将姫(ちゅうじょうひめ)に関する伝説で、世に知られている、のだそう。

 

この展覧会では、「當麻曼荼羅」とともに極楽浄土信仰の聖地となっていった

當麻寺の寺宝と関連資料が展示されている。

 

 もう圧巻だったのは、何といっても国宝の「綴織當麻曼荼羅」。

約4メートル四方の巨大な掛け軸だ。

8世紀、中国の唐または奈良時代の作。

 

この曼荼羅は、天平宝字7年(763)、高貴な中将姫の

極楽往生を願う思いによって織りあわされた、

しかも一晩で織った、と伝わる。

 

現物の迫力に、しばし圧倒。

巨大な織物はしかし、見た目は「赤っぽい大きな物」というだけで

何が描かれているのかほとんど見えない。

 

それでもじーっと見ていると、「上品下生」の文字や

おびただしい数の仏さまが現れてくる。

それはちょうど暗い映画館に入ってしばらくはよく見えないけど、

目が慣れてくるといろんなものが見えてくるのに似ている、

といえば卑近すぎる例だろうか。

 

曼荼羅のそばにはデジタル画像の曼荼羅解説があり、

とってもわかりやすい。

それを見て、巨大な曼荼羅の中央にましますのが

阿弥陀如来、その脇を観音菩薩勢至菩薩が固めていることがわかる。

その三体の身長は、無量の大きさという。計り知れない大きさ、ってことかな。

 

全体としては、輝かしい浄土の光景を、たくさんの仏さまや天人によって表現し、

観無量寿経」というお経の絵解きになっている。

その内容は、画面の左側に、インドのある国の王妃が極楽浄土を願うストーリーが、

右側には浄土を心に思い描くための教えが示されている、と解説にあったが

そこまでは見てとれなかった。

 

ただ、巨大な絵解きをあらわして、

極楽往生 = 極楽浄土に生まれ変わるんだという、

中将姫の強い思いが伝わってきた。

 

(本尊の曼荼羅の展示は5月6日で終了。6月2日までは、室町時代に写された【文亀本】を展示)

 

 この曼荼羅を収めるための厨子も、またまた素晴らしい。

扉を閉じた時に内側になる面を展示してあった。

そこには表面に黒漆を塗り、金銀の蒔絵で蓮の花や蓮池が表現されている。

さらに、厨子の改修に関わった、2500人ほどの名前が記されている。

人々の篤い浄土信仰が伝わってきた。

 

こちらも国宝で、鎌倉時代 仁治3年(1243)の作。

 

あと、かわいらしいところでは、「二十五菩薩像」がよかった。

この世を去る時に阿弥陀さまが極楽浄土へ導いてくださる、

劇的な「阿弥陀来迎」の場面を盛り上げる役割をすると思われる、

高さ50センチ程度の菩薩像が二十五体。

 

それぞれ太鼓や鼓をたたいたり、

撥を持って弦楽器を奏でたり、

シンバルのようなものを鳴らしたり。

だいぶ楽しそう。

こんなふうに旅立てるならいいなあ、と感じられた。

 

会場には「中将姫坐像」も展示されていた。

清廉な雰囲気の中に、まだあどけない表情も見て取れる。

Ⅰ300年近く時代が下った今でも

伝説が今に伝わる不思議を思った。


 

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