なずなノート

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大阪で10年ぶりの野外公演、維新派「透視図」

 

  2014年秋、10年ぶりに大阪で上演された維新派の公演「透視図」。

 

維新派は、大阪を拠点にイギリスやイタリア、オーストラリアや

ブラジルといった海外でも公演している劇団である。

「喋らない台詞、歌わない音楽、踊らない踊り=ジャンジャンオペラ」を

コンセプトにしたその表現は独特だ。

 

「風景の中に白塗りの姿が引き立つ」と、維新派を主宰する松本雄吉が

テレビで話していたのを見たが、リズムに合わせて

白塗りの役者たちがセリフであり歌であり、

あるいはそのどちらでもないような発声や動きで、

世界のどこにもない時間と空間をつくりだす。

 

会場は中之島GATEサウスピア。

土佐堀川堂島川が交わり、安治川と名前を変える一角である。

何もないこの地に、劇団員自らの手で1か月かけて

建てたという屋外劇場が出現。

劇場に隣接する公演の前後に客が楽しめる屋台村も手がける。

 

客席に座ると、正面に安治川、その向こうに新梅田シティの高層ビル群の

灯り、そして空中庭園あたりのオレンジ色のライトが点滅するのが見える。

左手には大阪市中央卸売市場と出入りするトラックが見渡せる。

これらすべての風景を取り込み、「この場所でしか成立しない」

作品が完成する。

 

今回の「透視図」は、海から川へと人やものが行き交い、発展した大阪の

現代から過去への透視図。

5拍子や7拍子のリズムに乗せた単語の羅列により、

ストーリーが伝えられる。

 

今里、酉島、桜島、四貫島、新世界……といった大阪の地名を発し、

椅子や時計、ちゃぶ台、鶏など昭和を思わせる生活臭のするものを

抱えながら、役者は走ったり歩き回ったりする。

 

そうして、沖縄やアジアからの移住者もふくめて

さまざまな人やものを受け入れ、飲み込み、

水の都として発展してきた大阪の姿を映す。

 

役者たちはワイヤレスマイクを使う。そのため広い舞台の

どの位置から声を発してもスピーカーを通して均一に聞こえる。

距離感は感じられない。

 

その分、マイクが拾わない音、たとえば走り去る足音や

急に足を止める音、水中を歩いたり走ったりする水音から、

距離や舞台の奥行きが感じられた。

 

最後は川の水が舞台上の通路に引かれ、

川と一体となったように感じられた。圧巻の光景だった。

 

10月半ばとはいえ吹きっさらしの川辺で2時間ほど

じっと座っているのはつらい。

だけど、ここでしかない世界を体験するために

みんな準備をととのえて維新派を見に訪れる。私も。

 

ところで維新派の公演中、維新派が内装を手がけた映画館

シネ・ヌーヴォ」では『七人の侍』誕生60周年記念 黒澤明映画祭が始まった。

この間の距離、歩いて15分ほど。

この時期の大阪市西区は、世界のどこにもないほど濃かった。

 

写真は終演後に屋台村で行われたサーカス。

音楽の演奏や空中5メートルほどのロープ渡り? などを見せてもらった。

屋台で買ったラム多めのラムチャイに酔いがまわり、

夢のような不思議な一夜となった。

 

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