「家元に伝わる茶の湯の道具(二)表千家歴代ゆかりの棚と水指」
表千家北山会館で毎年秋に開かれる特別展。
今年のお題は「家元に伝わる茶の湯の道具(二)表千家歴代ゆかりの棚と水指」。
棚のしつらえによって点前が変わることはわかっても
それぞれの棚をどう使ったらよいのかは恥ずかしながら、さっぱり。
茶の湯を学ぶ身とはとてもいえない有り様だが
開き直って見た目、デザイン重視に切り替えて会場を巡った。
いちばん気になったのは、
「真塗手桶水指(しんぬり ておけ みずさし)」。
直径30㎝くらいか。どこもとがったところのない、バランスのよい形。
手桶水指は室町時代には広まっていたもので
利休の茶会にもたびたび登場していると解説にある。
この水指は千利休が塗師の記三(きぞう)に作らせたもので、
利休の添え状つき。
茶系と鈍い金色で表装された添え状には
「手桶を五つ注文し、そのうち三つは特に急ぐ。
手桶の足の幅は畳の目二つ分に収まるよう
塗りと全体の形は、よくよく吟味するよう」(現代語訳)と
細かく指示してある。
「手桶」「三ツ」「一段」といった文字が読み取れる。
かがんで見ると、確かに。
足が三つあり、それぞれ楕円を半分に割ったような形。
畳に触れる部分がおそらく2㎝ほどで、畳の目2つ分には至っていない。
こんなところまでこだわりが行き届いているんだなあと納得する。
しっかり塗るようにと指示した漆は、今もなおつやつやで
見ている自分の影を映していた。
持ち手の継ぎ目のところなど含めて
どの部分もそのままの美しさを保っている。
洒落ていると思ったのは、
「了々斎好 青漆爪紅(つまぐれ)長板」。
書き付けによると文政2年(1819)、己卯(つちのとう)の年に
表千家9代了々斎(りょうりょうさい、1775 - 1825)が好んだとされる長板。
全体を青漆刷毛目塗りにし、小口(側面)は爪紅となっている。
爪紅とは、ホウセンカの異名だとか。
つやなしの漆の板のサイドに、ちらりと紅色を効かせるなんて。
靴底を深紅で彩ったあるブランドの靴が人気を集めているが、今よりずっと昔、
約200年前には今に通じるセンスが既に発表されていたのだとわかる。
おもしろいなと思ったのは、
「如心斎好 梔子水指(じょしんさいごのみ くちなしのみずさし) 樂左入作」。
表千家7代家元 如心斎(1705 - 51)と同じ時代を生きた
樂家6代の左入(1685 - 1739)による水指。
口が狭く、ひょろっと細長い形。
真ん中がふくらんで下に向かってすぼむ「くちなしの実」を表現するのに
赤樂の色が合うだろうという感覚は、今でも共有できる。
さてリーフレットには夜間開館の表記あり。たぶん今年からか。
毎週金曜日および10月11日、25日、11月15日は午後7時まで開館。
(入館は午後6時30分まで)ふだんは午後4時30分閉館のところ、
初めて夕暮れ時に入館する。
入口には手作りとおぼしきハロウィーンのカボチャが!
すっかり日が暮れてから外に出ると、ろうそくの火が灯されていて気分ほっこり。